法人営業における成約率は、企業の実績や効果的な営業活動を示す指標の一つです。
しかし、どのような営業手法が平均的にどの程度の成約率を持っているのか、また成約率を向上させるための方法や注意点は何か、といった疑問を持つ営業担当者も多いことでしょう。
この記事では、法人営業の成約率に関する基本的な知識から具体的なアドバイスまでを網羅的に解説します。
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法人営業(btob)における成約率とは
法人営業、通称btob(ビジネス・トゥ・ビジネス)は、企業間での商取引を指します。
このときの成約率とは、具体的には、営業活動を通じて取得したリード(潜在的な顧客)のうち、実際に商品やサービスを購入したり、契約に至った企業の割合を示す指標です。
成約率は、営業の効果や品質、さらには企業の戦略的方向性を評価するための非常に重要な要素となります。
高い成約率は、効果的な営業戦略や顧客ニーズへの適切な応答を示す良いサインと言えるでしょう。
成約率の計算方法
成約率を計算するための基本的な方法は、成約した件数を営業の対象となった全件数で割り、その結果をパーセンテージで表すものです。
計算式は以下の通りとなります。
例えば、100社に営業提案を行い、そのうち20社が契約を結んだ場合、成約率は20%となります。
この数値は、営業活動の効果を数値で捉える際の基本的な指標として用いられます。
高い成約率は、効果的な営業アプローチや提案内容の質を示唆する重要なデータとなるのです。
法人営業の成約率の平均【営業手法別に紹介】
法人営業の成約率の平均は、用いられる営業手法や業種、市場の状況によって大きく異なります。一般的に、伝統的な対面の営業手法では、成約率が5%~15%程度と言われています。
一方、デジタルマーケティングやメールマーケティングを活用した営業では、1%~5%程度の成約率となることが多いです。
また、ウェビナーやオンラインセミナーを利用しての営業活動では、参加者の関心度が高いため、成約率が10%~20%に達することも。
このように、選ぶ営業手法やターゲットの特性によって、成約率には大きな差が生まれることを理解することが重要です。
営業手法 | 成約率の平均 |
テレアポ | 1%前後 |
飛び込み営業 | 3%〜 |
セミナー | 10%〜20% |
メール | 1%〜 |
法人営業の成約率が上がらない3つの原因
法人営業における成約率の低下は、多くの企業にとって深刻な悩みとなっています。
高い成約率は、効率的な営業活動と企業の収益向上をもたらしますが、逆に低い成約率は時間と労力の無駄となることも。
では、どのような要因が成約率の低下を引き起こすのでしょうか。
ここでは、法人営業の成約率が上がらない主要な3つの原因を詳しく解説していきます。
これらの原因を理解し、適切な対策を取ることで、成約率の向上を目指しましょう。
- 市場調査の不足
- 営業プロセスの問題
- 提案内容の不足
市場調査の不足
市場調査は、営業活動の基盤となる重要なステップです。
適切な市場調査が行われていない場合、ターゲットとする企業や業界のニーズを正確に捉えることが難しくなります。
例えば、IT業界向けの新しいクラウドサービスを提供しようとする企業が、市場調査を怠り、実際の業界の要望やトレンドを見落としていた場合、提案内容が受け入れられにくくなるでしょう。
また、競合との差別化も難しくなります。
市場調査の不足は、的外れな提案や営業戦略の構築につながり、結果として成約率の低下を招く可能性があるので、正確な市場の情報を元に、顧客の真のニーズに答える提案を心掛けましょう。
営業プロセスの問題
営業活動におけるプロセスの不備やムダは、成約率を大きく低下させる原因となります。
例えば、初回のアポイントメント取得から提案、フォローアップまでの流れが明確でない場合、顧客とのコミュニケーションが途切れやすくなります。
あるいは、提案書の作成に時間がかかりすぎるため、顧客の関心が冷めてしまうケースも考えられます。
さらに、フォローアップのタイミングや方法が適切でない場合、顧客の疑問や懸念を解消できず、成約のチャンスを逸してしまうことも。
営業プロセスを見直し、スムーズなコミュニケーションと迅速な対応を実現することで、より高い成約率を目指せるでしょう。
提案内容の不足
成約率の低下の大きな要因として、提案内容の不足が挙げられます。
多くの場合、顧客が納得しない提案や、顧客のニーズに合わない内容は、契約への道を遠ざける結果となるものです。
例えば、A社が新しいITソリューションを提案する際、その機能やメリットだけを強調しても、顧客の実際の業務や課題への対応策が示されていなければ、納得されにくいでしょう。
また、競合他社との差別化や独自性が不明確な提案は、価格競争を避けられなくなるリスクも。
提案は、顧客の痛みや課題をしっかりと捉え、それに対する解決策を明確に示すことが肝心です。
法人営業の成約率を上げる6つの方法
法人営業の成約率の向上は、売り上げや業績の成果を実感するための鍵となります。
しかし、多くの企業が成約率の向上に苦戦しているのが現状です。
そこで、本記事では、成果を実現するための具体的な方法を6つ紹介します。
これらの手法を組み合わせることで、営業活動の効果を最大限に引き出すことができるようになるでしょう。
それぞれの方法には、特定のシーンや状況での適用が考えられるので、自社の状況や課題に合わせて選択し、取り入れててください。
- 営業活動の可視化と営業プロセスの共有
- 営業活動の標準化とトークスクリプトの作成・改善
- 営業目標を細分化
- 顧客のニーズを正確に捉える
- 心理学テクニックを活用する
- 顧客へのレスポンスを素早くする
営業活動の可視化と営業プロセスの共有
営業活動の可視化は、チーム全体の生産性や効果を向上させるための大切なステップです。
具体的には、営業マンが日々行っているアクションや取引先とのコミュニケーションの履歴を明確にすることで、問題点や改善点を発見しやすくなります。
例えば、CRMツールを活用して各営業の活動ログを集約し、全員でそのデータを参照できるようにすることで、営業の成功パターンや失敗の要因を共有できます。
さらに、これらの情報を元にした営業プロセスの標準化や最適化が進められ、チーム全体の営業力が統一され、営業能力が向上するでしょう。
営業活動の標準化とトークスクリプトの作成・改善
営業活動を効率的に行うためには、そのプロセスを標準化することが重要です。
営業活動の標準化とは、各営業が行う活動や手法を統一し、その基準を明確にすることを指します。
これにより、新入社員の教育がしやすくなり、ミスの発生も抑えられるでしょう。
具体例として、あるIT企業では初回訪問時のアプローチ方法を標準化しています。
その際、トークスクリプトを活用し、どのような話題でお客様との関係を構築するか、商品の説明の流れなどが明記されています。
このスクリプトは、過去の成功例や失敗例を元に継続的に改善され、営業の品質が向上しています。
また、定期的なミーティングでトークスクリプトの効果や反応を共有し、それをもとに内容をブラッシュアップすることで、より効果的な営業活動が展開できるようになります。
営業目標を細分化
営業目標を細分化することは、達成感を持ちながら効率的に目標に近づくための戦略的な方法です。
大きな目標だけを設定すると、その達成までの道のりが長く感じられ、途中で挫折することも少なくありません。
しかし、その目標を小さなステップに分けて進めることで、短期間での達成感を得られ、モチベーションも維持しやすくなります。
具体例として、年間の売上目標が1億円である場合、それを月ごと、さらには週ごとに細分化します。
月間の目標を2500万円、週間の目標を625万円とすることで、毎週の進捗を確認しながら目標に近づけるよう努力します。
このように細かく目標を区切ることで、実際の進捗が見えやすくなり、どの部分で努力が必要かも明確になるでしょう。
顧客のニーズを正確に捉える
顧客のニーズを正確に理解することは、法人営業において最も重要な要素の一つです。
それによって、提供するサービスや商品がターゲットとする顧客にとって魅力的かどうかを判断し、成約率を高めることができます。
顧客とのコミュニケーションを深め、彼らの声をしっかりと聞くことで、隠れたニーズや課題を発見することができるようになるのです。
例えば、ある企業がオフィス用のデスクチェアを提供しているとしましょう。
初めは「座り心地の良さ」だけを強調していましたが、顧客からのフィードバックを通じて「長時間の作業にも耐えられる耐久性」や「スペースを取らないコンパクトなデザイン」といったニーズが浮かび上がったとします。
これを元に商品の改善や新しい商品ラインナップを考えることで、より多くの顧客のニーズに応えることができるよようになるでしょう。
心理学テクニックを活用する
心理学のテクニックは、営業活動においても非常に効果的な手法であり、顧客の意思決定プロセスに影響を与えることができます。
特に、法人営業において、相手の反応や態度を理解し、有利に進めるための手助けとなります。
例として、『返報性の法則』を挙げることができます。
これは、「人は受けた恩恵に対して報いたい」という心理的な感覚を指すものです。
営業の現場での具体的な活用方法として、無料サンプルや特典を提供することで、顧客の信頼を得るとともに、将来的な取引の可能性を高める効果が期待できます。
このようなアプローチを適切に活用することで、営業の成功率を高めることができるのです。
下記に法人営業で活用できる心理学テクニックをいくつか紹介しておくので参考にしてください。
- ミラーリング効果
- 相手の身体的動作や言葉、態度を模倣することで、無意識的に信頼関係や共感を生むテクニック。
- 具体例:顧客が手を頬に当てて考えている際、営業担当も同じ動作をする。
- バックトラッキング
- 過去の発言や会話の内容を再度持ち出して、相手の考えや意見を確認する手法。
- 具体例:「先程、品質が最も重要だとおっしゃっていましたね。それに関して私たちの商品が…」
- ドア・イン・ザ・フェイス
- 解説:初めに拒否されそうな大きな要求を出し、拒否された後で本来の小さな要求をする手法。
- 具体例:「この全商品セットはいかがですか?」→「それでは、この単品はどうでしょうか?」
- フット・イン・ザ・ドア
- 解説:最初に小さなお願いや要求をし、承諾を得たら次第に大きな要求をするテクニック。
- 具体例:無料のサンプル使用を勧めた後、満足してもらい次に本商品の購入を提案する。
- バンドワゴン効果
- 解説:多くの人が行っている、もしくは支持しているという事実を強調し、それに乗るよう誘導するテクニック。
- 具体例:「多くの業界トップ企業が採用しているこのサービスを…」
- 両面提示
- 解説:商品やサービスの良い点だけでなく、悪い点も公平に提示することで信頼感を生む手法。
- 具体例:「この商品は高速動作が魅力ですが、少し高価です。」
顧客へのレスポンスを素早くする
法人営業において、レスポンスの速さは極めて重要な要素となります。
お客様からの問い合わせや要望に迅速に対応することで、信頼関係を築くことができるのです。
例えば、競合他社との差別化を図る場面で、他社よりも迅速に情報提供や見積もりを行うことで、お客様のビジネスの進行をサポートし、選ばれる確率が高まります。
また、納期の短い案件にも柔軟に対応することが可能となります。
タイムリーなフィードバックは、お客様に安心感を与え、長期的な取引の基盤ともなるでしょう。
法人営業の成約率が高い人の特徴
法人営業は、B2Bの取引を主体とするため、個人向け営業とは異なるアプローチが求められます。
成約率が高い営業担当者は、単に商品やサービスの特徴を伝えるだけでなく、企業としての価値提案や相手の課題解決にどのように寄与できるのかを明確に示すことができるのです。
そして、これらの営業スキルを持つ人には共通する特徴がいくつか存在します。
以下で、その主要な特徴を詳しくご紹介いたします。
情報収集能力が高い
法人営業において情報収集能力は、極めて重要な要素といえます。
成功する営業担当者は、ターゲットとする企業の背景や業界のトレンド、競合他社の動向などを深くリサーチし、それを基に適切な提案を行います。
たとえば、A社が新たなプロジェクトを立ち上げた際、そのニュースをキャッチし、それに関連する製品やサービスをタイムリーに提案することができれば、成約のチャンスを高めることができるでしょう。
また、顧客の未来の課題やニーズを予測するための情報も収集し、先回りして製品を提供することで、信頼関係を築くことができます。
このような情報収集能力が高い営業担当者は、顧客からの信頼も厚く、結果として成約率が高まるのです。
関係構築能力が高い
法人営業では、製品やサービスだけを売るのではなく、信頼関係を築くことが不可欠です。
関係構築能力が高い営業担当者は、単なる取引関係を超えて、顧客とのパートナーシップを構築することを目指します。
例えば、B社の担当者との初めての打ち合わせで、仕事の話だけでなく、共通の趣味や家族の話などでコミュニケーションを深めることができれば、信頼感が生まれやすくなります。
また、定期的に情報提供や業界の最新トピックスをシェアすることで、顧客との接点を増やし、関係性を強化することができるでしょう。
このような深い関係性は、長期的な取引に繋がるだけでなく、新たなビジネスのチャンスを生み出す可能性も高まるのです。
タイムマネジメント能力が高い
法人営業において、タイムマネジメント能力は極めて重要です。
効率的に時間を活用することで、多くの顧客を訪問し、ビジネスチャンスを最大化できます。
タイムマネジメント能力が高い営業担当者は、1日のスケジュールをきちんと計画し、無駄な移動時間を減らす工夫をします。
例えば、A社との打ち合わせが午前中に終了した際、近隣のB社に予期せぬ訪問を行い、新たな商談のきっかけを作るなどのアプローチが考えられるでしょう。
また、待ち時間や移動時間を利用して次の商談の資料作成や情報収集を行うことで、効率的な業務遂行が可能となります。
高いタイムマネジメント能力を持つ人は、時間の使い方一つで大きな差をつけることができるのです。
法人営業の成約率を上げる際の注意点
法人営業において、成約率の向上を目指す際、いくつかの重要な注意点が存在します。
効果的なセールスは、単に商品やサービスを売るだけでなく、お客様との信頼関係を築き、真のパートナーシップを形成することが基本となります。
しかし、その過程でのいくつかの誤ったアプローチや過度なアクションは、逆効果となることも。
ここで、法人営業での成約率を上げるための重要なポイントと、避けるべき行動について、具体的な内容とともに詳しくご紹介いたします。
焦って押し売りをしない
法人営業において、成約を追求するあまり焦ってしまうと、つい押し売りのようなアプローチを取ってしまうことがあります。
しかし、これは短期的には効果を示すかもしれませんが、長期的な信頼関係を損ねる要因となりえます。
例えば、ある企業Aが新しいソフトウェアを導入しようと考えている際、営業担当者が強引に高価なオプションを勧めた場合、一時的には契約が成立するかもしれません。
しかし、その後のフォローで企業Aが本当に必要としていない機能に投資したことを感じれば、次回からの取引を避けるかもしれません。
信頼を大切にし、お客様のニーズをしっかりと捉え、必要な提案を心がけることが大切です。
自分よがりのセールスをしない
法人営業における接触の際、自分や自社の製品・サービスの良さだけを強調する「自分よがり」のセールスは避けるべきです。
真の価値提案は、お客様の課題やニーズに合致したものであるべきです。
例えば、あるIT企業Bの営業担当者が、最新の機能を持つ製品を強く推す場面を考えます。
その製品が企業Bの技術力の証かもしれませんが、お客様にとっては過剰な機能であり、必要としない場合があります。
そういった時、お客様の視点を忘れたセールスは、反発や不信感を生む原因となります。
営業のプロセスで最も大切なのは、相手の立場に立って考え、真の価値を提供することです。
数字を意識しすぎない
営業活動において、数字や目標達成に固執しすぎることは、場合によっては逆効果となります。
成果を上げるための数字は重要ですが、それに固執しすぎると、お客様のニーズや状況を見失いがちになります。
例えば、月末に目標達成のために無理に商談を進めた結果、お客様からの信頼を失うケースもあるでしょう。
また、ショートタームの数字だけを追いかけることで、ロングタームの大きな取引のチャンスを逃す可能性も考えられます。
真の営業の価値は、数字だけでなく、お客様との信頼関係の中にあり、数字への過度な執着は、その価値を低減させるリスクを孕んでいることを考慮しておきましょう。
法人営業の成約率を伸ばして売り上げをアップさせましょう
法人営業は、個人営業とは異なる独特のニーズや要望があります。
成功の鍵は、お客様のビジネス課題を深く理解し、最適な提案を行うことにあります。
まず、情報収集能力を鍛え、お客様の業界動向や競合状況をしっかり把握しましょう。
次に、コミュニケーション能力を高め、お客様との信頼関係を築くことが大切です。
そして、提案の際には、明瞭かつ論理的に説明することで、相手の納得感を引き出すことができます。
これらのステップを踏むことで、成約率の向上と売り上げアップを実現しましょう。